2016年10月2日日曜日

覇権のゆくえ

アメリカ合衆国が孤立主義に回帰しようとしている。大統領選挙に勝つのはヒラリー・クリントンだと思うが、トランプ旋風はアメリカ国民がこれ以上世界の面倒ごとに巻き込まれたくないと考えていることを明らかにした。これまでアメリカ合衆国は世界の警官としてアフガニスタン、イラク、シリアに軍事介入を行い、クリミア紛争ではNATOの中核としてロシアに対抗してきた。そして現在は南シナ海問題で中国と対立し、日本、韓国、フィリピンといった同盟国と中国の封じ込めに奔走している。しかし、アメリカ合衆国の一強時代は終わりを迎え、日本やドイツといった先進国だけではなく、中国を筆頭とする新興国が世界経済において重要なプレイヤーとなってきた。アメリカ合衆国が世界一の超大国であることに変わりはないが、その経済力は相対的に落ち込んでいる。国際秩序の安定は必要なことだが、何故アメリカ合衆国だけが莫大な軍事費を支出し続けなければならないのか。ドイツや日本といった同盟国は自力で地域の安定を維持するべきであり、ロシアや中国と対立を続けるのも得策ではないとアメリカ国民が考えるのも自然なことである。新興国の経済成長が今後も続くものと仮定すれば、アメリカ合衆国でトランプの政策が支持されるのは時間の問題である。

しかし、現在の国際情勢でアメリカ合衆国が孤立主義に回帰するのは極めて危険である。ロシアと中国は領土的野心に溢れており、特に世界第二の経済大国となった中国の国力は凄まじい。アジアやアフリカの新興国に次々とインフラ投資を行い、事実上の軍事同盟にまで至っている国も多い。国際金融の面でもAIIBを設立し、人民元はついにIMFのSDRに加わった。EU脱退を決めたイギリスは先進国の中で真っ先にAIIBへの参加を表明し、中国に接近している。イギリスはアメリカ合衆国の最重要同盟国であり、歴史的な経緯からしてもイギリスの裏切りはアメリカ合衆国にとって相当なショックだったに違いない。ドイツ、フランス、イタリアといったヨーロッパの主要国は軒並みAIIBに参加することとなり、ヨーロッパがアメリカ合衆国のコントロールから離れてきていることを見せつけた。

このような情勢下でアメリカ合衆国が孤立主義に回帰すればどうなるだろうか。ロシアのクリミア半島併合は確定し、かつての勢力圏だった東ヨーロッパを奪い返しにくるだろう。中国もアメリカ合衆国が介入しないと分かれば、南シナ海は言うに及ばず、いずれは台湾併合に乗り出すのではないか。日本も相当な危機に直面する。アメリカ軍が撤退した後の沖縄は中国にとって絶好の標的である。ここに至り、中国とロシアに真っ向から対抗することを選ぶ国が二つ現れる。それはドイツと日本である。EUの盟主となったドイツはアメリカ合衆国に代わって東ヨーロッパをロシアから守るべく立ち上がる。日本も中国の脅威から身を守るべく、戦前のように急速な軍備拡大を行う。韓国、フィリピン、ベトナムといった周辺国も中国の脅威を受けて日本に接近するようなる。そして第三次世界大戦は驚くべきことにアメリカ合衆国不在の状態で行われるのではないか。

第三次世界大戦の主な戦場は東ヨーロッパと東アジアである。東ヨーロッパでロシアに対抗するのはドイツ、ポーランド、ウクライナの三か国である。多くのヨーロッパ諸国はドイツ寄りだが中立を維持し、イギリスだけは早くもロシアへの接近を試みるだろう。東アジアでは日本、韓国、フィリピン、ベトナムが中国に対抗する。中国陣営に入るのは北朝鮮、ラオス、カンボジア、ミャンマー、カザフスタン、バングラデシュ、パキスタン、スリランカといった国々である。アメリカ合衆国、日本と共にセキュリティーダイヤモンドを担うはずのオーストラリア、インドはいずれも日和見な態度で日本には味方しない。アメリカ合衆国の参戦がなければ中国が勝利する可能性が高いためである。アメリカ合衆国さえ参戦すればヨーロッパもアジアも大多数の国がアメリカ陣営となるだろう。しかし、アメリカ軍のいない戦場においてドイツと日本に味方する国がどれだけいるだろうか。そして同盟国を見捨てたアメリカ合衆国もいずれ中国とロシアに滅ぼされるだろう。

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