2016年8月22日月曜日

スイッチング件数の地域差に関する考察

電力自由化から4か月以上が経過したが、スイッチング件数の地域差が興味深いので考察してみた。電力広域的運営推進機関によると、7月末時点でのエリア別スイッチング件数は以下の通りである。

北海道電力 7万5000件
東北電力 4万500件
東京電力 87万200件
中部電力 10万8600件
北陸電力 3900件
関西電力 29万9200件
中国電力 4600件
四国電力 7300件
九州電力 6万3700件

一目で分かるのは東京電力と関西電力のスイッチング件数が突出していることである。スイッチング件数の9割近くが東京電力と関西電力のエリアに集中している。いかに首都圏と関西圏の人口が多いと言っても、日本の人口にそこまでの偏りはない。この2つのエリアにスイッチングが集中した要因としては、参入した新電力の数の多さが挙げられる。首都圏と関西圏は市場の大きさが桁違いであり、どの新電力も主戦場としているエリアである。特に東京ガスと大阪ガスの存在が大きい。同じユーティリティー企業であるガス会社は電力会社にとって最大のライバルであり、実際にスイッチング件数の半分は東京ガスと大阪ガスによるものである。他のエリアには東京ガスと大阪ガスのような大手のガス会社が存在しないため、ライバルの不在が低調なスイッチング件数に繋がっていると考えられる。関西電力に次いで規模の大きな中部電力のスイッチング件数が少ないのはライバルである東邦電力の存在感が小さいためであろう。関西電力は二度も電気料金の値上げを行ったため、電気料金が高いイメージがある。確かに全国的に見て関西電力の料金水準は高い部類にあるが、実は中部電力も関西電力並みに電気料金は高い水準にある。震災前は関西電力にトヨタ系の需要を全て奪われるのではないかと戦々恐々としていた程である。電気料金の水準以上に、エリア内に強力なガス会社が存在するかどうかがスイッチング件数の多さに影響しているように思う。

もちろん電気料金の水準もスイッチング件数に強い影響を与えている。電気料金が全国で最も高い北海道電力は東京電力と関西電力に次いでスイッチングの割合が高くなっている。そして電気料金の最も低い北陸電力ではスイッチング件数が最も少なくなっている。また、北陸電力と同様に震災後の値上げをしていない中国電力もスイッチング件数が少ない。しかし、電気料金の水準からは説明できない事象が発生している。それは東北電力と九州電力のスイッチング件数である。東北電力は他電力と異なり、東日本大震災によって原発停止以外に直接的な被害を受けている。太平洋沿岸の発電所、送配電設備が被災したことにより、震災後の東北電力は全国トップクラスの料金値上げに踏み切った。現在でも北海道電力、東京電力に次いで高い電気料金となっている。一方、九州電力は原子力発電所の早期再稼働が見込まれることもあって、料金水準は低めに抑えられている。九州電力の電気料金は北陸電力に次ぐ安さである。それにも関わらず、需要家数の変わらない東北電力と九州電力では何故か九州電力の方がスイッチング件数が多くなっている。同じ辺境の地である東北と九州で何故このような差が生まれたのか。それは地域の特徴的な家族構造、ひいては住民の価値観に由来しているのではないかと思う。

九州は核家族の割合が高い地域である。鹿児島県は東京都に次いで核家族の割合が高い都道府県であり、3位の神奈川県、4位の大阪府を上回って2位にランクインしている。核家族の割合が9割を超えるのはこの4都府県のみである。都市化の進んだ首都圏や関西圏ほど核家族の割合が高くなっているが、何故か鹿児島県は全国的にもトップクラスで核家族の割合が高いのである。九州は他にも宮崎県、福岡県、長崎県、大分県で核家族の割合が8割を超えている。英米圏に代表されるように核家族は自由を好み、新しいものを受容する傾向にある。この価値観がスイッチング件数の多さに反映されたのではないか。一方、東北は核家族の割合が低い地域である。仙台都市圏を抱える宮城県でも核家族の割合は8割を下回り、全国最下位の山形県に至っては核家族の割合は6割程度となっている。東北の家族構造は日本において伝統的な直系家族が特徴的であり、直系家族は秩序と安定を好む保守的な文化を形成する。住民の保守的な姿勢が東北電力のスイッチング件数を料金水準の割に低調なものにしていると考えられる。

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