2016年8月20日土曜日

ニセコイの悲劇 負け組パティシエ小咲ちゃん

いちご100%の東城綾とニセコイの小野寺小咲は非常に共通点の多いキャラクターである。黒髪で清楚なルックス、天然、温厚、内気な性格、そして物語のスタート時点において主人公と両想いの関係にある。物語を通じて最後の最後まで両想いであるにも関わらず、何故か金髪ヒロインに主人公を奪われるという損な役回りまで同じである。いちご100%では東城をずっと応援していたので、東城が真中に振られたときはショックで胸を痛めたものだが、それでも東城はまだ良かった。真中の恋愛のパートナーにこそ選ばれなかったものの、映画製作という夢のパートナーには選ばれたからである。負け組ヒロインの東城であるが、最終話では意外にも生き生きとしている。小説家として類稀なる才能を持つ東城は真中の憧れであり、東城は真中といつまでも夢を追いかけることができるのだろう。というか一緒に仕事をするようになったら、この二人は絶対不倫すると思う。


一方、同じ負け組ヒロインでも小咲の状況は絶望的である。小咲は楽のお嫁さんになるという以外に夢を持っていないためである。家業である和菓子の仕上げが得意という描写はあったが、最終話では何故かパティシエになっている。マジカルパティシエ小咲ちゃんのネタなのだとは思うが、いちご100%の西野と同じパティシエになるとは何とも皮肉である。真中と結ばれた西野はフランス留学でパティシエの夢も叶えて順風満帆なラストを迎えたが、小咲は楽に振られた挙句に作者のネタで意味もなくパティシエにさせられた。和菓子屋の娘なのに何故パティシエにされたのか。大和撫子として描かれてきた小咲が最終話で何の前触れもなくパティシエにさせられたのは違和感しか覚えない。同じ負け組ヒロインであるはずの東城と比較しても圧倒的な負け組であったが、勝ち組パティシエの西野と比較すると小咲の悲惨さが際立つ。

ニセコイ最終話では主要メンバーの中で小咲だけが唯一顔を見せず、楽と千棘のウエディングケーキを作っている。楽との電話を終えた小咲の台詞は意味深である。一見すると意欲的な台詞のように聞こえるが、疲れ果てた人間の自殺前の台詞のようにも聞こえる。物語を通してずっと相思相愛であった相手を圧倒的に自分より劣るヒロインに奪われたのである。小咲は楽に振られてからずっと死にたくなるような日々を送ってきたのではないか。いちご100%のときは西野も東城とは違った魅力が明確に描かれていたため、西野の勝利は予想外ではあったが納得することはできた。しかし、ニセコイでは物語の構造から千棘の勝利は約束されていたものの、物語後半になるにつれて千棘はどんどん魅力を落としていったため、楽が小咲より千棘を好きになったのは全く理解できない。小咲も楽がどうして千棘を選んだのか正直納得できていないのではないかと思う。小咲は何故わざわざパティシエになったのか。それは作者の単なる思い付きではない。作者の思惑を超えて、まさに楽と千棘のウエディングケーキを作るために小咲はパティシエになったのである。絶望を抱えながら小咲はこの日を待っていた。楽と千棘、二人のフィナーレを飾るウエディングケーキである。顔を見せずに巨大なウエディングケーキの前に立っている小咲の描写は何とも不気味である。この巨大なウエディングケーキの中は果たしてどうなっているのだろうか。

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