2016年5月16日月曜日

経営戦略全史まとめPart6 21世紀の経営環境と戦略諸論(2000年代~)

◆世界経済の不安定化
21世紀は2001年のアメリカ同時多発テロに始まり、原油価格高騰、リーマンショック、ユーロ危機と世界経済の不安定な状況が続いている。新自由主義を代表する経済学者ミルトン・フリードマンは市場原理に基づく経済運営を唱え、ロナルド・レーガンやマーガレット・サッチャーによって1980年代から世界経済は自由主義への偏重を強める。新自由主義は世界経済の成長に貢献した一方、2009年の世界金融危機といった市場の失敗によるリスクも大きくなっている。

◆世界経済の膨張と複雑化
1990年代後半から停滞していた世界経済は2003年頃から急成長を遂げる。BRICsを中心とした新興国の経済成長が著しく、世界経済の規模は10年で倍増した。トーマス・フリードマンは著書「フラット化する世界」において、豊かな大衆が増加して世界が均質化していることを唱えた。一方、リチャード・フロリダは著書「クリエイティブ・クラスの世紀」において、均質化したのはクリエイティブ・クラスが集まる都市だけであり、都市単位で考えると世界はむしろ複雑化していると主張した。

◆産業・企業・機能の融合と再編
放送と通信など産業間の融合が進んでいる。産業バリューチェーンの再構築をマッキンゼーはIPR(Industrial Process Redesign)、BCGはデコンストラクションと名付けた。企業間の融合も進む。一部の機能をアウトソーシングすることや競合同士が提携して効率化を図ることも珍しくなくなった。調達・生産・物流の諸機能を一体として管理するSCM(サプライチェーン・マネジメント)、マーケティング・営業・サービスの諸機能を一体として管理するCRM(顧客関係マネジメント)が生み出され、企業の機能も再編が進んでいる。

◆21世紀の経営テーマ
Thinkers50に選出された経営思想家をテーマで見ると、イノベーション、リーダーシップ、ラーニングが最も人気を集めているテーマである。学生はネットとソーシャルに注目している。MBA卒業生の多くはコンサルティングファームと投資銀行を除けば、グーグルやアップルといったネット関連企業に就職している。ネット系のビジネスで起業する学生も多い。アメリカ合衆国の就職人気ランキングではNPOが人気であり、ソーシャルへの関心が高い。日本は他の先進国に比べて企業の海外売上比率が低く、グローバル化が最大の課題となっている。

★クレイトン・クリステンセン(1952~)
HBSのクレイトン・クリステンセンは著書「イノベーションのジレンマ」において、業界のリーダ企業は顧客志向の強さから既存の技術や仕組みを磨くことに専念するため、次のイノベーションに遅れを取りやすいことを示した。リーダー企業のジレンマを解決する方法として、クリステンセンは既存のビジネスから離れた小さな別動隊を組織内に生み出し、新しい顧客を開拓することを唱えた。また、イノベーターの特徴として発見力に優れていることを挙げ、創造性こそがリーダーシップとして最も重要な資質であると述べた。

★ビジャイ・ゴビンダラジャン(1949~)
新興国の経済成長によって年間世帯所得3000ドル~20000ドルの中所得者層は大幅に増加しており、新中間層の市場が劇的な拡大を続けている。また、年間世帯所得3000ドル以下のBOP層(Base Of Pyramid)を対象としたビジネスも生まれている。ダートマス大学のビジャイ・ゴビンダラジャンは著書「リバース・イノベーション」において、新興国を起点としたイノベーションについて論じた。ゴビンダラジャンはGEの研究を通じて、GEが中国市場向けに開発した低価格製品がアメリカ合衆国でも普及していることに着目し、新興国で生まれたイノベーションが先進国に逆流している実態を明らかにした。制約の多い新興国の方がビジネスにおいてイノベーションが必要とされるためであり、新興国に小さな機能横断型の起業組織を設置して、リバース・イノベーションを活性化させることを説いた。

◆ネットの本質
インターネットは従来トレードオフの関係にあったリーチ(情報がどこまで届くか)とリッチネス(情報がどれだけ豊かか)の両立を可能にした。企業や個人は情報を広く深く発信できるようになり、グーグルの検索サービスが人々の情報収集能力を格段に引き上げた。C2Cのオークションサービスが生まれ、中小企業もネットを活かした顧客開拓が可能となり、ネットは個人を始めとした小さき者に力を与えた。

◆ラーニングの新しい動き
北欧発のフューチャーセンターは未来の知的資本を生み出すための試みであり、幅広いステークホルダーを巻き込んだ対話の場が創造的な問題解決策を多く生み出していることで注目されている。一方、未来の知的資本から最大の収益を上げるために知財戦略が必要とされている。重要な特許を取得するだけではなく、知的財産からどのように収益を上げていくかという戦略が求められている。フューチャーセンターや知財戦略で活躍するクリエイティブ・クラスがいる一方、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンは著書「ワーク・シフト」において、スキルがなければ世界中の労働者と競争することになり貧困に追い込まれると論じた。

◆ソーシャルビジネスの発展
社会的課題をビジネスによって解決する試みはバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌスに始まる。ユヌスは農村の貧困層に少額融資(マイクロクレジット)を行うグラミン銀行を設立した。無担保でも村民からの信頼によって融資を受けられる仕組みであり、貧困からの脱却を支援するビジネスとして注目を集めた。ゲーム理論による病院と研修医のマッチングシステムを築いた経済学者アルヴィン・ロスとロイド・シャプレー、無料でオンライン・ビデオ教育を提供するカーン・アカデミーの創設者サルマン・カーンなど、医療と教育の分野を中心にソーシャルビジネスが発展を遂げている。

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