2016年5月15日日曜日

経営戦略全史まとめPart5 ポジショニングとケイパビリティの統合と整合(1990年代~)

◆ポジショニングVSケイパビリティ
ケイパビリティ派躍進の背景となっていた日本企業の成長は1990年代から停滞を見せる。マイケル・ポーターは1996年に「戦略とは何か」という記事をHBR(ハーバード・ビジネスレビュー)に投稿し、競争優位を築くためにはケイパビリティよりポジショニングが重要であることを改めて主張した。ケイパビリティに優れていたはずの日本企業が不調に陥っているのは戦略の不在、即ちポジショニングの欠如が原因であると喝破した。ポーターの投稿を契機として、ポジショニングVSケイパビリティの論戦が繰り広げられることになる。

★ヘンリー・ミンツバーグ(1939~)
カナダの経営学者ヘンリー・ミンツバーグは徹底して現場を重視する姿勢から、戦略は机上で定型的に生まれるものではないことを主張した。著書「戦略サファリ」において、ポジショニングとケイパビリティのどちらを重視すべきかは状況によって変わるため、企業の発展段階に応じて戦略と組織を柔軟に変えていくコンフィギュレーションを唱えた。ミンツバーグによってポジショニングとケイパビリティ統合の道が開かれた。

★ロバート・キャプラン(1940~)&デビッド・ノートン(1941~)
HBSのロバート・キャプランと経営コンサルタントのデビッド・ノートンは財務指標に偏っていた企業評価の状況を変えるべく、バランスト・スコアカードという業績管理方法を編み出した。1970年代後半以降、アメリカ合衆国では企業の株式を握るようになった機関投資家が短期的な株価の上昇を求め、経営者は財務指標の向上に注力するようになった。しかし、財務指標はあくまでも過去の情報であり、環境変化の激しい現代において真の企業価値を示すものではなかった。バランスト・スコアカードは財務、顧客、業務プロセス、イノベーションと学習という4つの視点から将来性を含めて企業を評価するフレームワークであり、ポジショニングとケイパビリティ両方の視点を統合する試みでもあった。

★チャン・キム(1952~)&レネ・モボルニュ(1963~)
フランスの名門ビジネススクールINSEADの経営学者である韓国出身のチャン・キムとアメリカ合衆国出身のレネ・モボルニュはヨーロッパ発のヒット作「ブルー・オーシャン戦略」を生み出した。マイケル・ポーターが市場での競争に打ち勝つ戦略を追い求めたのに対して、従来の市場(レッド・オーシャン)で競争するのではなく、競争のない新しい市場(ブルー・オーシャン)を生み出す戦略を唱えた。新しい市場コンセプトの案出とそれを実現するケイパビリティの創造、即ちバリュー・イノベーションこそが真の戦略であると唱えた。市場の創造に成功した事例としてアップルのiPod、シルク・ドゥ・ソレイユ、任天堂のDSやWiiが挙げられる。

★ジェフ・ベゾス(1964~)
ブルー・オーシャン戦略を体現する人物がアマゾン創業者のジェフ・ベゾスである。インターネットビジネスにチャンスを見出したベゾスは1995年にインターネット書店のアマゾンを創業する。eコマース(電子商取引)事業に対する先見の明に加えて、ベゾスはブルー・オーシャンを築くための確たる戦略を有していた。物流センターへの莫大な投資を行ったアマゾンは一時的に赤字に陥るものの、翌日には商品を届けるというクイック・デリバリーを可能にした。新たな顧客価値によってeコマース市場にブルー・オーシャンを築いたアマゾンは2016年現在、時価総額において世界7位の巨大企業に成長している。

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