2016年5月7日土曜日

経営戦略全史まとめPart2 近代マネジメントの創世(1930~1960年代)

★チェスター・バーナード(1886~1961)
第一次世界大戦後の好景気に沸いていたアメリカ合衆国は1929年にバブル崩壊を迎える。世界恐慌という外部環境の変化に対して、経営者の役割を論じたのがニュージャージー・ベル電話会社の社長チェスター・バーナードであった。バーナードは著書「経営者の役割」において、組織を共通目的、貢献意欲、コミュニケーションの三要素から成るシステムとして定義し、共通目的となる経営戦略を生み出すことが経営者の役割であると論じた。実際に世界恐慌によってフォードが不振に陥る中、多ブランド戦略を打ち出したアルフレッド・スローンはGMを世界一の自動車メーカーに成長させた。

★ピーター・ドラッカー(1909~2005)
オーストリア出身の経営学者であるピーター・ドラッカーはマネジメントの伝道師として知られる。GMの企業研究を通じてドラッカーは大企業における分権経営とマネジメントの重要性を発見する。経営資源であるヒト・モノ・カネをいかに管理するかというマネジメントの概念はドラッカーの発明ではないが、ドラッカーはマネジメントの有用性を社会に普及させる伝道師として活躍した。

★イゴール・アンゾフ(1918~2002)
ロシア出身の経営学者イゴール・アンゾフは軍事用語の「戦略」というワードを用いて、市場における競争という経営戦略の概念を生み出した。経営戦略に一定の分析方法や構築手法を示したアンゾフは経営戦略の父と言える。アンゾフが生み出した最も有名な経営戦略ツールはアンゾフ・マトリクスとして知られる。製品と市場を軸に企業としての成長の方向性を4種類に分ける2×2のマトリクスで、既存の市場を相手に既存の製品で戦う市場浸透戦略、既存の製品を新しい市場に売り込む市場開拓戦略、既存の市場に新しい製品を開発して売り込む製品開発戦略、新しい製品を開発して新しい市場に投入する多角化戦略を提案した。

アンゾフは著書「企業戦略論」において、企業の意思決定をStrategy(製品と市場)、Structure(組織編成と資源分配)、System(予算編成と直接管理)の3種類に分ける3Sモデルを提唱した。そして自社の理想とする姿を描いて現在との差を埋めるギャップ分析を通じ、最も重要な戦略的意思決定を行うことこそ経営者の責務であると論じた。経営戦略は各事業の方針を決める事業戦略、そして全体を管理する企業戦略に分けられ、成長の方向性を定めて事業のポートフォリオを管理するツールとしてアンゾフ・マトリクスが生み出された。

アンゾフは既存の企業活動の中でコアとなる強みこそ競争力の源泉であると考えた。そのため経営戦略には製品・市場分野と自社能力の明確化、競争環境の特性理解、シナジーの追求、成長ベクトルの決定という4要素が欠かせないことを主張した。競争に勝つにはコアとなる強みが必要であるという考えは後のケイパビリティ戦略に、競争環境の分析は後のポジショニング戦略につながっていく。

★アルフレッド・チャンドラー(1918~2007)
経営史家として知られるアルフレッド・チャンドラーはデュポン、GM、スタンダード石油ニュージャージー、シアーズ・ローバックというアメリカ合衆国を代表する大企業4社の戦略・組織研究を通じて、著書「組織は戦略に従う」とその有名なフレーズを生み出した。4社の特徴は集権的な職能別組織から製品別・地域別の事業部から成る事業部制へと転換していたことであった。事業の多角化に成功してトップ企業に登りつめた4社の事例から、事業部制によって多角化戦略を進めるというコンセプトが流行する。チャンドラーは事業戦略と組織戦略が相互作用を及ぼすことを論じていたが、組織戦略は実行が難しいために事業戦略が先導することとなり、「組織は戦略に従う」というフレーズが広まることとなった。

★マーヴィン・バウアー(1903~2003)
マーヴィン・バウアーはジェームズ・マッキンゼーが創業したマッキンゼー・アンド・カンパニーを引き継ぎ、アメリカ合衆国を代表する経営コンサルティングファームに育て上げた。バウアーは1950年代から1960年代にかけて流行していた事業部制の導入支援を主力商品とし、定量的に企業を診断するツール「ジェネラル・サーベイ・アウトライン」を用いて、コンサルティングファームを社会に浸透させた。

★ケネス・アンドルーズ(1916~2005)
HBS(ハーバード大学ビジネススクール)のケネス・アンドルーズは戦略プランニングの手法を論じる中で、有名な経営戦略ツールのSWOTマトリクスを生み出した。内部要因でポジティブな要素をStrengths、ネガティブな要素をWeaknesses、外部要因でポジティブな要素をOpportunities、ネガティブな要素をThreatsと整理する2×2のマトリクスである。ちなみにSWOTマトリクス自体はアイデア整理のためのツールであり、SWOT分析と称されるような機械的に戦略を決めるツールではない。アンドルーズ自身、経営戦略とはある種のアートであると考えていたようである。

★フィリップ・コトラー(1931~)
フィリップ・コトラーはマーケティングの第一人者として知られる。コトラーは著書「マーケティング・マネジメント」において、R(調査)、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)、MM(マーケティング・ミックス)、I(実施)、C(管理)という5つのステップから成る戦略的マーケティングを論じた。特にSTPは市場を細分化し、標的とする市場を定め、競合に対してどのような差をつけるか決めるマーケティングの中核である。STPを具体化する段階がMMであり、製品、価格、チャネル、プロモーションというマーケティング手段の4Pをバランス良く組み合わせることが重要であると論じた。

コトラーは他にもプロダクト・ライフサイクル戦略、競争的マーケティング戦略などを提唱している。プロダクト・ライフサイクルは製品が導入期、成長期、成熟期、衰退期という4つのステージを経て市場に広がっていくという理論である。ステージに合わせて変化する市場規模、収益性、ターゲット顧客に応じて戦略を決めていく。一方、競争的マーケティングは市場におけるポジションによって戦略を決める考えである。

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