2016年5月5日木曜日

経営戦略全史まとめPart1 近代マネジメントの3つの源流(1910~1930年代)

経営理論の入門書として三谷宏治の経営戦略全史を読了。巷に溢れる様々な経営理論、それらが生み出された背景を理解するためには最適な良書であったと思う。400ページに及ぶ内容を章別に整理していきたい。

経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
三谷 宏治
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013-04-27)
売り上げランキング: 2,789

★フレデリック・テイラー(1856~1915)&ヘンリー・フォード(1863~1947)
フレデリック・テイラーは第二次産業革命期のアメリカ合衆国に生まれたエンジニアである。彼の功績は工場に科学的管理法を導入して生産性の向上を図ったことである。テイラーは熟練工の作業を研究し、当時急増していた未熟練工でも高い生産性を発揮できるマニュアルをつくりあげた。また、作業内容を標準化したことにより、一日の公正な作業量を定めるタスク管理と作業量に応じて賃金を変動させる段階的賃金制度の導入が可能となった。それまで労働者によって作業量が異なっていても、彼らの仕事を適正に評価することは難しかったが、テイラーの科学的管理法はこの問題を解決し、労働者のモチベーションを向上させた。執行機能を担うライン部門に加えて、計画機能を担うスタッフ部門が必要となったことで、現代では一般的な形態である職能別組織も生み出した。

テイラーの科学的管理法を最も体現した人物が自動車の大量生産に成功したヘンリー・フォードである。フォードは平均世帯年収の4倍もしていた自動車の価格をT型フォードによって8分の1にまで下げることに成功したが、その背景にあったのはマニュアル化、分業、流れ作業から成る大量生産システムであった。また、フォードは大量の労働者を高い賃金で雇って豊かな大衆を生み出し、大量生産、大量消費の時代の礎を築いた。しかし、フォードの大量生産システムはチャールズ・チャップリンの映画モダン・タイムスで風刺されたように、単純作業の精神的苦痛を伴うものであった。フォードのように生産性向上の成果を労働者と分かち合うような経営者も少なく、科学的管理法は次第に資本家と労働者の格差を拡大させる方向に働く。職能別組織も少数のホワイトカラーと多数のブルーカラーに組織を分断するものであり、労使対立を煽る結果につながった。

★エルトン・メイヨー(1880~1949)
オーストラリア出身の心理学者エルトン・メイヨーはアメリカ合衆国におけるホーソン実験を通じて、労働環境よりも職場の人間関係が労働意欲に影響を与えることを明らかにした。テイラーは経済的動機に基づいて行動する労働者を想定していたが、実際の労働者の行動は感情に大きく左右されていた。テイラーが活躍していた時代こそ人々は貧しく、生活水準の向上を至上の目的として労働者は働いていた。しかし、大衆が豊かになったメイヨーの時代において労働者は必ずしも経済的対価のみを追い求めていたわけではなかった。生産性向上のためには人の感情や人間関係といった定性的な情報も重要であり、テイラーの定量的な科学的管理法に対して、メイヨーは人間関係論を提起した。

★アンリ・フェイヨル(1841~1925)
フランスの鉱山経営者アンリ・フェイヨルは実務で培った経験から、従来の技術活動(開発・生産)、商業活動(販売・購買)、財務活動(財務)、保全活動(人事・総務)、会計活動(経理)に加えて、経営活動(経営企画・管理)が企業にとって必要不可欠な活動であると整理した。また、経営活動を計画(予測と活動計画)、組織化(経営資源供給)、指令(人的管理)、調整(バランス)、統制(フィードバック)の5要素をサイクルとして回すことであると提起し、現在もPDCAサイクルとして知られている。テイラーとメイヨーが現場の生産性向上に着目したのに対して、企業活動の統制に着目したフェイヨルは経営という概念を広く捉えた人物であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿