2015年12月20日日曜日

日本に必要な移民政策

急増するシリア難民とイスラム国によるパリ同時多発テロにより、ヨーロッパでは移民問題が再燃している。第二次世界大戦後、西欧諸国は不足する労働力を補うために積極的に移民を受け入れた。移民の多くは植民地など経済的なつながりが深い地域の出身で、イギリスはインドやパキスタン、フランスは北アフリカやイベリア半島、ドイツはトルコや東欧から多くの移民を受け入れた。その結果、移民の背景を持つ人口はイギリスとフランスで1割、ドイツでは2割にまで膨れ上がった。今や経済的に貧しい移民は社会の負担となり、宗教や文化の違いによって生じる摩擦は後を絶たない。モスク建設に対する反対運動、ムスリムの暴動、ヨーロッパの街において移民は様々な問題を引き起こしている。日本にとってもヨーロッパの移民問題は他人事ではない。人口減少社会に突入したことで、日本でも1000万人単位での移民受け入れが検討されているためだ。

ヨーロッパの移民問題を考えると移民の受け入れには消極的となってしまうが、移民で成功している国もある。それは世界の覇権国家アメリカ合衆国である。アメリカ合衆国は歴史的に移民の国であるが、現在もアメリカン・ドリームは健在で、優秀な人材はアメリカ合衆国に移住する傾向にある。アメリカ合衆国の経済においてIT産業は重要な地位を占めるようになっているが、インド出身の移民が多くIT産業に従事していることは有名である。グーグル、マイクロソフトのCEOはインド出身の移民であり、優秀な人材を海外から受け入れることがアメリカ合衆国の経済を支えている。日本やドイツといった先進国の多くが人口減少によって経済の縮小を余儀なくされる中、アメリカ合衆国は移民によって人口を年間1%の割合で増加させており、将来も有望な市場として海外から投資を集めることに成功している。

歴史的にも移民で成功した国は多くある。例として近世のプロイセンが挙げられる。ルイ14世がフォンテーヌブローの勅令によってフランスからユグノー(フランスのカルヴァン派)を追放すると、プロイセンは積極的にユグノーを受け入れた。2万人のユグノーがプロイセンに流入し、ベルリンの人口は1/3がフランス人となる程であった。ユグノーの多くは商業や工業に従事していたため、彼らが持っていた資本や工業技術はプロイセンの経済発展に大きく寄与した。プロイセンは宗教に寛容な姿勢を示し、ユグノーの他にも経済的な先進地であるネーデルラントから積極的に移民を受け入れている。プロイセンはやがてオーストリアやフランスとの戦争を経て、ドイツ帝国を築き上げることになるが、積極的な移民の受け入れによる経済発展がその礎となっていた。

日本の移民政策を議論するとき、大抵は日本人が就きたがらない建設業やサービス業に従事する移民を中国や東南アジアといった発展途上国から受け入れることが想定されている。彼らは最初から社会の底辺を補うための道具として考えられており、そのような移民政策ではヨーロッパのように移民が将来の社会問題になることは間違いないだろう。現在でさえ在日の朝鮮人や中国人に充てられる社会保障費が大きいということで社会問題になっている。日本に必要な移民政策は過去のプロイセンやアメリカ合衆国のように優秀な人材を海外から集めることである。つまり数より質の移民政策が求められる。

日本にはアメリカ合衆国や中国のように経済的な勢いはないが、世界トップクラスの暮らしやすさがある。イギリスの情報誌MONOCLEは2015年の住みやすい都市ランキングで東京を1位に選んでおり、世界4大都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京)でTOP10にランクインしているのは東京だけである。福岡と京都もTOP25にランクインしており、東京を中心に日本の都市は海外から人々を集めるだけの実力を有していると思う。日本の治安の良さは世界的にも有名で、移住後の暮らしやすさを武器として日本は積極的に海外から優秀な人材を集めていくべきである。

問題は日本では英語が通用しないことだろう。アメリカ合衆国、イギリス、カナダ、オーストラリアといったアングロサクソン諸国で英語が通用するのは勿論であるが、英語圏ではないフランスやドイツといった国々でも英語はある程度通用する。イギリスの裏側に位置する日本で英語が通用しないのは当然と言えば当然ではあるが、このままでは優秀な移民は他の先進国に奪われてしまう。楽天、ユニクロなどの企業は英語を社内公用語として採用しているが、そうした企業は非常に珍しい。これからは総合商社、メーカーなど海外との関わりが深い企業を中心に英語で仕事ができる環境を整えていく必要がある。また、英語のみで暮らせる移民特区を東京につくるのも良いだろう。生活と仕事の両面で英語環境が整えられた地域があれば、日本への移住の足掛かりになるはずである。

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