2015年12月6日日曜日

2016年の原油価格はどうなるか

2015年の原油価格は低調な傾向が続いた。2014年の夏頃まで原油価格は1バレル100ドル以上で推移していたが、2014年の後半に急落して40ドル台に突入した。これはアメリカ合衆国の住宅バブル崩壊に端を発する2008年の世界金融危機のときに並ぶ低価格である。2015年の前半に60ドルまで復調するも、やはり2015年の後半には再び40ドル台まで下落した。アメリカ合衆国において原油価格の指標となるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格は40ドルを割ってしまっている。

原油価格急落の背景にはアメリカ合衆国のシェール革命がある。これまでアメリカ合衆国は中東の原油に依存していたが、自国で産出するシェールオイルが輸入原油を代替するようになった。シェールオイルよりも存在感があるのがシェールガスで、2013年にアメリカ合衆国はロシアを抜いて世界一の天然ガス産出国となった。天然ガスと原油には互換性があり、アメリカ合衆国は化石燃料を自給できるようになったと言っても過言ではない。アメリカ合衆国は世界最大の原油消費国であるため、これまでアメリカ合衆国に輸出されていた世界の原油が余るようになってしまった。こうして供給過剰となった原油の価格は急落した。

1973年のオイルショック以降、世界の原油価格をコントロールしてきたのはOPEC(石油輸出国機構)であった。原油価格急落の原因が供給過剰にあるのであれば、供給量を削減すれば良い。世界の原油生産の半分を占めるOPECにはそれが可能である。しかし、OPECは原油の生産量を据え置くことにした。生産コストの高いシェールオイルを市場から締め出すためと言われており、確かにアメリカ合衆国のシェール事業者が破産に追い込まれる事例が増えているそうである。条件の良い油井も減っており、住友商事がシェールオイルの開発に失敗して巨額の損失を出したことは記憶に新しい。ただし、OPECの戦略はロシアの焦土作戦と同じで、自らも甚大な被害を受けることになる。原油の輸出に依存するOPEC加盟国の経済を根底から揺るがすためである。

12月4日にウィーンで開かれたOPECの総会では減産目標を定めることが議論された。産油国の中でもサウジアラビアを中心とした湾岸諸国は裕福だが、南米のベネズエラとエクアドル、アフリカのアルジェリア、ナイジェリア、アンゴラなどは比較的貧しい。焦土作戦に耐えられなくなったベネズエラは5%の減産を提案したが、サウジアラビアの反対によって減産目標は定められなかった。湾岸諸国は原油安を受け入れてでも原油のシェアを維持したい考えであり、アメリカ合衆国のシェールオイルを駆逐するまでOPECの方針は変わらないと思われる。また、原油埋蔵量世界4位のイランが欧米からの経済制裁を解かれて、原油輸出を増加させる方針である。原油の供給過剰はしばらく解消されそうにない。世界経済の牽引役である中国の景気悪化を原因として原油需要も世界的に落ち込んでおり、原油価格の更なる低迷は避けられないと思われる。

2016年に原油価格が反転する可能性はないのか。反転のシナリオとしてISの勢力拡大が挙げられる。ISの勢力範囲がペルシャ湾に到達して湾岸諸国の原油生産を脅かすような事態となれば、供給不安から原油価格は急反発することだろう。1980年のイラン・イラク戦争、1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争では原油価格が高騰しており、ISに関わる戦争がペルシャ湾にまで飛び火すれば原油価格の反転も起こり得るだろう。

ISの勢力拡大以外ではロシアの経済破綻が考えられる。ロシアはOPEC加盟国ではないが、サウジアラビアと並ぶ世界最大の原油生産国である。ロシア経済は原油と天然ガスの輸出に依存しており、現在の原油価格低迷はロシア経済に深刻なダメージを与えているはずである。さらにクリミア半島の併合とウクライナ内戦への介入によって欧米からの経済制裁も受けている。ロシア軍機撃墜事件でトルコとの関係は冷え込んでおり、同盟国の中国も経済が低迷している状況である。まさに四面楚歌のロシアであるが、ウクライナとシリアへの介入によって軍事支出は増加する一方である。ロシアの経済破綻は十分に考えられ、原油の一大供給国が市場から消えることで原油価格が反転する可能性はあり得る。他の産油国も経済状況は日に日に厳しさを増しており、産油国の経済破綻がオイルショックにつながる可能性はある。

0 件のコメント:

コメントを投稿