2015年10月30日金曜日

21世紀の中国が20世紀ドイツの歴史を歩むなら

安全保障関連法で一人負けする日本において、中国が直接的な武力行使に出ることは考えにくいと述べたが、20世紀初頭には国際社会を敵に回して戦争に突入した国が存在した。ヴィルヘルム2世率いるドイツ帝国である。当時のドイツ帝国と現在の中国は似通った点が多い。もし21世紀の中国が20世紀ドイツの歴史を歩むとしたらどうなるか、今後の展開を予想してみた。

ドイツ帝国は遅れて登場した列強である。大英帝国とフランス帝国が早くも17世紀には統一された国家を形成し、18世紀から植民地獲得競争を繰り広げる中、神聖ローマ帝国は三十年戦争によって分権化が進み、統一された国家の誕生は18世紀まで待たなければならなかった。ロシア帝国を除いて、ドイツ帝国はヨーロッパにおいて最大の人口を誇る。巨大な人口と豊富な石炭資源によって、ドイツ帝国は18世紀後半から産業革命による急速な工業化によって国力を上昇させていった。しかし、海外の利権は既に大英帝国とフランス帝国によって牛耳られ、ドイツ帝国は国際社会において国力に見合うだけの地位を与えられていなかった。ドイツ帝国は当時の覇権国家である大英帝国に匹敵する国力を有するようになっていたが、国民一人当たりの経済水準、民主化の程度などにおいて、先行する列強からは遅れをとっていた。

これは中国とも重なる点が多い。アヘン戦争以降、中国は清朝という形式上の国家によって統一されてはいたものの、実態は軍閥が割拠する分権的な政治体制となっていた。日中戦争、国共内戦を終えて、中国はようやく統一された国家となり、鄧小平によって計画経済から市場経済へと移行したことで急速な経済成長も成し遂げた。GDPは日本を上回って世界第二位に上り詰め、購買力に関してはアメリカ合衆国に匹敵するレベルに至っている。しかし、国際社会はアメリカ合衆国を中心とする先進国によって動かされており、共産主義という政治体制も影響して、中国は国際社会では一流国とは見なされていない状態にある。

中国が20世紀のドイツ帝国と同じ状況に置かれているとすれば、次に中国が目指すのは軍事力によって自らの地位を国際社会に認めさせることである。ドイツ帝国は典型的なランドパワーであるが、大英帝国との建艦競争に乗り出して積極的な海洋進出を図った。大英帝国の経済力の源泉は海軍力によって自由貿易をコントロールすることにあり、これは現在の覇権国家であるアメリカ合衆国にも共通する。中国もランドパワーでありながら、かつてのドイツ帝国と同じように海軍力の増強に力を入れている。南シナ海の領有権問題は21世紀のモロッコ事件となるかもしれない。

中国がドイツ帝国と同じように国際社会を敵に回して戦争に突入するとすれば、仮想敵国の筆頭とされている日本や台湾よりも、まずは朝鮮半島を軍事的に制圧するだろう。朝鮮半島を制圧することでアメリカ合衆国は中国大陸に容易に手出しをできなくなる。大陸の安全を確保してから、日本や台湾への空爆を開始するだろう。第一次世界大戦と異なり、中国は同じランドパワーであるロシアを同盟に引き込んでいる。陸路から中国を攻めることが難しいため、中国との戦争は長期化する可能性が高い。しかし、キール軍港の水兵反乱がドイツ帝国の崩壊を招いたように、中国は市民の反乱によって自壊するだろう。中国は国際社会において確かに政治的に異質であるが、市民レベルでは既に国際社会の仲間入りを果たしている。政治的な自由に加えて、経済的な利益の追求さえも政府に邪魔されるようになれば、中国で市民革命が起きるのは時間の問題である。

ただし、敗戦後の中国はさらに厄介なことになる。帝政ドイツ崩壊後にナチスが台頭したことを考えれば、敗戦によって屈辱を味わった愛国心の強い中国人が次に何を仕出かすかは分からない。これまでは良くも悪くも共産党によるコントロールが効いていたが、民主化によって中国のナショナリズムは暴走する可能性がある。敗戦後も相変わらず巨大な人口を抱える中国は更なる経済成長を遂げて、短期間に戦後復興を成し遂げることだろう。国際社会を相手に再度戦争へ突入することも可能である。アメリカ合衆国は民主主義を崇拝しているようだが、民主主義とナショナリズムが結びつくと独裁政治よりも危険な場合があることを理解する必要がある。長期的に見れば、共産党が中国の暴走を抑える可能性もある。

中国が本気で武力行使を図った場合、日本はどうするべきか。まずはアメリカ合衆国と連携して中国の侵攻に抵抗する必要があるが、負け戦が濃厚な場合はフランスのような立ち回りをするのも一つの手である。第二次世界大戦において、パリを占領されたフランスはナチスドイツに降伏した。以降、フィリップ・ペタンを首班とするヴィシー政府はナチスドイツに進んで協力することで、フランスの更なる荒廃を防いだ。そして東方でソビエト連邦が巻き返しを図り、連合軍によるノルマンディー上陸作戦も成功すると、フランス国民はすぐに手のひらを返してナチスドイツを追放した。そして現在は戦勝国として国際連合の五大国の一員の地位を占めている。被占領国としての苦難は並大抵のものではないが、核兵器や生物兵器を使われて将来の復興さえも望めなくなるような事態よりはマシだろう。アメリカ合衆国と中国の超大国に挟まれた日本はフランスのような強かさが必要である。

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