2015年9月27日日曜日

ヨーロッパの電力会社・ガス会社BEST10

電力事業・ガス事業の自由化を契機に、ヨーロッパでは電力会社とガス会社の集約が進んだ。アメリカ合衆国と異なり、ヨーロッパでは国営企業が電力事業とガス事業を担っていた国が多く、国営企業の民営化と相次ぐ合併、買収を経て、ヨーロッパには複数の巨大な電力・ガス会社が誕生することとなった。これらの企業は海外の電力会社・ガス会社の買収に乗り出しており、電力・ガス業界の世界的な再編がヨーロッパを中心に今後進んでいくと思われる。米フォーチュン誌の世界企業ランキング(売上高)「Fortune Global 500」の2015年度版より、ヨーロッパの電力会社・ガス会社BEST10を紹介する。

1位 E.ON(ドイツ)
ヨーロッパ最大の電力会社にして、世界でも屈指の大企業。石油メジャーの存在しないドイツにおいては最大のエネルギー事業者でもある。ドイツの電力自由化を契機として、2000年にプロイセン電力とバイエルン電力が合併して成立した。ニーダーザクセン州、ヘッセン州、バイエルン州などドイツ中央部に基盤を置く。2003年にはドイツのガス最大手ルールガスを買収して、ガス事業にも参入。さらにスウェーデン、イギリス、アメリカ合衆国の電力会社を次々と買収し、多国籍エネルギー企業へと変貌を遂げた。福島第一原子力発電所の事故以降、ドイツ政府が脱原子力と再生可能エネルギーの更なる積極的な導入に舵を切ったことで、近年E.ONは原子力発電所の廃炉と火力発電所の稼働率低下という問題に悩まされている。しかし、E.ONは発電量の大半を占める火力発電と原子力発電の部門を新会社に移行し、今後は再生可能エネルギー、送配電事業、顧客サービスに特化する経営戦略の大転換を行うことでドイツのエネルギー革命に対応しようとしている。

2位 Enel(イタリア)
イタリアの国有電力会社として発足し、1999年に民営化。電力自由化後もイタリア国内で圧倒的なシェアを占め、ドイツのE.ONに次ぐヨーロッパ最大級の電力会社。イタリアではチェルノブイリの事故を受けて、現在は原子力発電所が一基も運転していないため、電源構成の中心は火力発電である。ただし、Enelは価格競争力を得るため、フランスのEDFから原子力発電所の電力を購入している。スペイン最大手の電力会社Endesaの大型買収に成功し、イタリアの他にスペイン、ラテンアメリカ諸国で電力事業を展開している。

3位 GDFスエズ(フランス)
フランスの国有ガス会社として発足し、2008年にエネルギー大手スエズとの合併を経て、現在はガス事業の他に電気、水道と公益事業を広く手がけている。スエズは名前の通り、レセップスが設立したスエズ運河会社が前身となっている。フランスのガス事業において圧倒的なシェアを占める他、原子力発電を中心とするEDFに対して、GDFスエズは再生可能エネルギーに力を入れている。ベルギーの電力大手エレクトラベルを傘下に持ち、ヨーロッパのエネルギー事業者としてはドイツのE.ONに次ぐ規模を誇る。2015年に社名をEngieに変更した。

4位 EDF(フランス)
フランス電力。第二次世界大戦後にフランスの国有電力会社として発足し、2004年に民営化。現在もフランス政府が株式の大半を所有しており、電力自由化後もフランス国内で圧倒的なシェアを占めている。また、上位3社と同様に海外の電力会社を積極的に買収しており、ドイツの四大電力会社の一つEnBW(バーデン・ヴェルテンベルク・エネルギー)を傘下に持つ。フランスといえば原子力発電だが、その原子力発電所を運営しているのがEDFである。一方、火力発電の割合が極端に低く、特異な電力会社である。福島第一原子力発電所の事故を受けて、フランス政府は原子力発電への依存度を減らす方針であり、EDFも対応が求められている。

5位 RWE(ドイツ)
ライン・ヴェストファーレン電力。E.ONに次ぐドイツ四大電力会社の一つ。E.ONに対抗して、ライン・ヴェストファーレン電力が周辺の電力会社を吸収合併する形で成立した。ノルトライン・ヴェストファーレン州、ラインラント・プファルツ州などドイツ西部に基盤を置く。イギリスの電力会社、アメリカ合衆国の水道会社などを買収し、E.ONと同様に積極的に海外で公益事業を展開している。E.ONと同じく今後は再生可能エネルギーの導入に注力することで、ドイツ電力業界の厳しい情勢を乗り越えようとしている。

6位 SSE(イギリス)
スコティッシュ・アンド・サザンエナジー。イギリスではフランスやイタリアと異なり、電力自由化後に国営企業であった中央電力公社が送電会社のナショナル・グリッドを残し、複数の発電会社と配電会社に分割された。その結果、小規模に分割された電力会社は次々にヨーロッパの巨大電力会社に買収される憂き目を見た。イギリスの電力業界は六大グループに集約されたが、E.ON系のE.ON UK、RWE系のRWE npower、EDF系のEDF energy、スペインIberdrola系のScottish Powerが大手の地位を確立し、イギリス企業はSSEとCentricaのみとなっている。

7位 Centrica(イギリス)
イギリスの国有ガス会社として発足し、電力自由化後は電力事業に参入した。現在ではイギリスの六大電力会社の一角を占める。日本でいうと東京ガスみたいな感じか。

8位 Iberdrola(スペイン)
バスク地方に本拠地を置く電力会社で風力発電に強みを持つ。風況の良いスペインでは風力発電の導入が進んでおり、発電量に占める割合は風力発電が原子力発電を抜いて一位となっているが、その風力発電の積極的な導入に努めているのがイベルドローラである。水力発電所、原子力発電所も運営しており、二酸化炭素排出量の少ない電源構成となっている。イギリスのスコティッシュパワーを買収するなど、海外進出も積極的に進めている。

9位 Gas Natural Fenosa(スペイン)
スペイン最大手のガス会社Gas Naturalがスペインの電力自由化後に電力事業に進出。天然ガスのコンバインドサイクル発電に強みを持ち、Endesa、Iberdrolaに次ぐスペイン第三位の電力会社Union Fenosaを買収して、スペインの電力大手としての地位を確立した。

10位 EnBW(ドイツ)
バーデン・ヴェルテンベルク・エネルギー。ドイツ四大電力会社の一つでドイツ南西部に基盤を置く。隣接するフランスの影響下にあり、EDFの傘下に加わっている。

また、BEST10にはランクインしなかったものの、小国スウェーデンの電力会社Vattenfallもヨーロッパの電力自由化を機に成長を遂げた企業である。スウェーデンの国有電力会社で、スウェーデン国内では主に水力発電所と原子力発電所を運営している。電力自由化後のドイツで次々と電力会社を買収し、旧東ドイツ地域で圧倒的なシェアを確保するに至り、現在ではドイツ四大電力会社の一角を占めている。三十年戦争でドイツを席巻したグスタフ2世アドルフを彷彿とさせる企業で興味深い。

日本の電力会社だと東京電力が6位、関西電力が10位にランクインする規模である。ヨーロッパ諸国は人口規模で日本に劣っており、最大のドイツでも日本の2/3、フランス、イギリス、イタリアは日本の半分の人口しかいない。それにも関わらず、日本の電力大手を超える規模の電力・ガス会社が複数存在している。日本は電力会社とガス会社が過剰に存在しており、ヨーロッパのように電力自由化を契機として合併と買収を通じた業界再編が進むことを願う。さもなくば、日本の電力市場とガス市場がこれらヨーロッパの大企業に奪われる日も遠くない。

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