2015年3月20日金曜日

これからの電源立地について

エネルギーを考えるときに重要となるのがEconomy, Energy Security, Environmentの3E+Safetyである。しかし、電源立地地域への影響、地域による制約という観点も日本のエネルギーのあり方を語る上で重要である。経済性、エネルギーの安全保障、環境性、安全性に加えて、立地地域への影響もエネルギーを評価する上で重要な要素となる。また、立地地域の制約を考えなければ、具体的なエネルギー計画は作成できない。

化石燃料、原子力、再生可能エネルギーの中で優先して利用すべきは再生可能エネルギーである。化石燃料はCO2排出による地球温暖化と資源枯渇の問題、原子力は放射性物質による深刻な事故の問題を抱えている。一方、再生可能エネルギーは持続可能な唯一のエネルギーである。ただし、再生可能エネルギーはコストの問題を抱えており、化石燃料と原子力に比べて発電単価が高い。特に、風力と太陽光は気象によって発電量が変動するため、発電量に対して過大な送電設備を要し、蓄電池の整備や火力発電所のバックアップも必要になる。

しかし、再生可能エネルギーには農山村地域と一次産業の維持につながる効果が見られる。北海道森町では地熱発電所の余熱が立地地域である濁川地区のハウス栽培に利用されており、高い収益の得られる農業を可能にしている。同じく北海道の下川町は林業の盛んな地域であるが、木質バイオマスによる発電と熱供給がエネルギーコストの削減と林業の維持につながっている。福島県郡山市では布引高原において風力発電と農業が共生している。風車用地の地代が農家の収入に寄与し、日本第2位の規模の風力発電が特産品である布引大根を有名なものした。さらに農山村地域がFITを活用して売電収入を得られるになれば、効果は今以上のものとなる。農山村地域と一次産業は衰退の一途を辿っており、これを維持するために多額の予算が投入されている。農山村地域と一次産業を振興する効果を考えると、再生可能エネルギーは経済合理性を持つ可能性がある。立地地域への効果に応じて買取価格を変化させるなど制度の調整を行えば、再生可能エネルギー政策は地域経済活性化の政策としても効果を発揮するようになるだろう。

一方、再生可能エネルギーには立地地域による制約という課題もある。地熱発電はその最たる例である。開発適地の周辺に温泉地が存在することが多く、温泉への悪影響を懸念する温泉地が反対運動を展開する事例が見られる。北海道の釧路市阿寒町のように天然記念物マリモへの悪影響を懸念して、地熱発電に反対する事例もある。風力発電もバードストライクや騒音の問題から、地域住民に反対される事例がある。再生可能エネルギーは水力発電のダム開発に代表されるように、自然環境にも悪影響を与える。CO2は排出しないが、必ずしも環境に優しいエネルギーというわけではない。再生可能エネルギーの開発に反対する自然保護団体は多い。こうした地域による開発の制約を考えなければ、再生可能エネルギーの導入量に関する具体的な議論はできないだろう。経済産業省は3/10に2030年の再生可能エネルギーの導入量見通しを示した。地熱発電は現状の2.7倍の導入量となっているが、果たして残り15年で可能なのか。現在、地熱発電開発の計画が浮上している地域の半分以上で地元の温泉地が消極的な姿勢を示している。また、木質バイオマス発電も、燃料となるチップの供給量が不足しているという話を聞く。立地地域による制約を踏まえると、再生可能エネルギーの導入はどこまで可能なのか。

日本の電力需要の内、再生可能エネルギーが現在賄っているのは10%程度であり、その多くが水力発電である。再生可能エネルギー30%でさえ努力目標とされているため、今後も日本のエネルギーの中心となるのは化石燃料と原子力だろう。ただし、原子力発電所は廃炉が進み、新設が今まで以上に困難になるため、その比率は減少していくだろう。現在、廃炉の工程に進んでいるのは日本原子力研究開発機構のふげん発電所(福井県敦賀市)、日本原電の東海発電所(茨城県東海村)、中部電力の浜岡発電所1号機・2号機(静岡県御前崎市)、東京電力の福島第一発電所(福島県大熊町)である。また、廃炉が決定しているのが、関西電力の美浜発電所1号機・2号機(福井県美浜町)、日本原電の敦賀発電所1号機(福井県敦賀市)、中国電力の島根発電所1号機(島根県松江市)、九州電力の玄海発電所1号機(佐賀県玄海町)である。原子力発電所は電源立地地域対策交付金が膨大な額に上り、他の電源と比べても立地地域に与える影響が非常に大きい。今後進んでいく廃炉は立地地域にどのような影響を与えるのか。

また、再稼働に対する姿勢は地域によって異なっている。茨城県東海村では首長が東海第二発電所の廃炉を要望しているが、税収と雇用の大部分を原発に依存している立地地域では珍しい。政府、電力会社、製造業を中心とした経済界は安価な電源である原子力発電所の再稼働を希望しており、廃炉になるかどうかは立地地域の姿勢に一任されている。廃炉を求めるか、再稼働を認めるか、さらには新増設まで認めるか、日本における原子力発電の今後は立地地域の姿勢にかかっている。立地地域の姿勢から原子力発電の今後を展望する。原子力関連施設が集中する下北半島と若狭湾沿岸地域は地域全体で原子力産業に依存しているため、隣接市町村からの反対も少なく、今後も原子力発電所と関連施設の立地地域として存続していくように思われる。

再生可能エネルギーと原子力で賄えない部分が化石燃料のシェアとなるが、今後もエネルギーの中心は化石燃料となるだろう。原子力発電所の停止を受けて、石炭火力発電所の新増設計画が全国で浮上しているが、環境面から新増設計画の一部にはストップがかかると思われる。長期的には石炭火力よりもガス火力が伸びそうである。それも小型のガス火力発電所である。デンマークでは小型の火力発電所を地域ごとに設置し、地域熱供給システムを整えて電気と熱を併給している。日本でも省エネの観点から寒冷地を中心に地域熱供給システムが普及していく可能性はある。

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